PCケーブルの任意の断面における実導入張力や摩擦の影響等の確認が可能です。(外/内/斜ケーブルに適用可能)
引用文献:「緊張管理・維持管理に適用可能な光ファイバを用いたPC張力分布計測技術の開発」、土木学会論文集E2、Vol.76、No.1、2020、pp.41~54
国道115号 月舘高架橋上部工工事(発注者:国土交通省東北地方整備局)の各種PCケーブルにmARTストランドを適用し、張力分布の計測を行いました。適用対象としたのは、下図に示すP1柱頭部ウェブケーブル、P1-P2間連結下床版ケーブル、およびP2-P4間外ケーブルです。いずれも橋軸方向のPCケーブルであり、両端からジャッキを用いて緊張を行いました。内ケーブルである上床版ケーブル、ウェブケーブルおよび下床版ケーブルには、裸線型のSmARTストランドを含む12S15.2マルチストランドケーブルを、外ケーブルにはECF型のSmARTストランドを含む19S15.2ECFマルチストランドケーブルを用いました。
施工時(対象ケーブル緊張時)の計測に加え、供用開始直前に再計測を行いました。再計測時点での、P1柱頭部ウェブケーブル、P1-P2間連結下床版ケーブル、P2-P4間外ケーブルの施工時からの経過期間は、それぞれ約26ヶ月、20ヶ月、19ヶ月です。
各ケーブルにおいて計測された、最終緊張時、定着直後および再計測時の張力分布を示しています。図中には、設計で必要とされる定着直後の導入張力の分布を「定着直後(設計値)」として、クリープ終了後の時点において設計上必要な張力分布を「クリープ終了後(設計値)」として併せて示しました。
いずれのケーブルにおいても、摩擦ロスや定着時のセットロスの影響を含め、ケーブル全長にわたる張力分布が計測されており、各断面で設計値以上の張力が導入されていることが確認できます。特に、曲げ角度の大きなP1柱頭部ウェブケーブルにおいては、最終緊張時にはケーブル中央部に向かって張力が減少し、セットロス発生後である定着直後には逆に中央部の張力が端部と比べて残存する傾向が示されており、PCケーブルとシース管との間の摩擦による影響が顕著に確認できます。
また、再計測結果は定着直後と比較して張力が低下している様子が確認できます。これは、各ケーブルの緊張・定着後に行われた施工(次ブロック以降のコンクリート打設、PCケーブル緊張など)や、コンクリートのクリープ、乾燥収縮などの影響と考えられます。特にP1-P2間連結下床版ケーブルにおいては、P2側の方が張力の低下量が大きい傾向が確認できます。これは、当該ケーブルの後に緊張された下床版ケーブルや外ケーブルによるプレストレス導入の影響などによって、弾性変形やクリープによる張力低下が左右非対称になったものと考えられ、設計で想定したとおりの張力の変動が計測できていると言えます。
いずれのケーブルにおいても、まだクリープは終了していない段階であると考えられますが、各断面において設計上必要な値に対してまだ十分な余裕を有していることが確認できます。
引用文献:「光ファイバを用いた引張り力分布計測技術のグラウンドアンカーへの適用」、土木学会論文集A1、Vol.76、No.1、2020、pp.126~138
赤谷地区渓流保全工他工事(発注者:国土交通省近畿地方整備局)の法面補強用グラウンドアンカーテンドンにSmARTストランドを適用し、引張り力分布の計測。適用対象としたのは、全61本のアンカーの図に示す6本で、いずれもECF型のSmARTストランド1本を用いる1S15.2シングルストランドテンドンです。自由長部の長さは7.5~14.1m、アンカー体長さは全て4.0m。
緊張後6ヶ月および18ヶ月経過後に、アンカー頭部から延長して存置した再計測用コネクタに計測器を接続し再計測。
グラウンドアンカー全長の張力分布を計測することで供用後も地盤の挙動を把握可能です。
自由長部からアンカー体内部まで、テンドン全長にわたる引張り力の分布が計測されており、自由長部における引張り力はほぼ一定となっていること、計画最大荷重(187kN)まで緊張した場合でもアンカー体の先端約2mの範囲では引張り力がほぼゼロとなっていることがわかります。また確認試験中の除荷時(20kN)には、アンカー体内部の逆向きの付着力によって引張り力が残存する現象が見られました。これらの計測結果から、自由長部ではグラウトとの付着が確実に切られており引張り力のロスがほとんど生じていないこと、アンカー体内部において定着長約2mで健全に定着されていることが確認できます。
緊張後6ヶ月経過後の再計測結果を見ると、定着直後と比較して最大で1割程度残存引張り力が増加していることが確認できます。この原因としては、当該アンカーの施工完了後に行われた施工(下段側の切土など)による影響などが考えられます。ただしその変動量は、グラウンドアンカー維持管理マニュアルで健全な状態と判定される範囲内(設計アンカー力以下、かつ定着時引張り力の80%以上)であり、またアンカー体内部においてはほとんど変化が見られないことから、グラウンドアンカーとして健全であると評価できます。緊張後18ヶ月経過後の計測結果は、6ヶ月経過時点とほぼ同様な分布を示しており、この間には大きな変化が生じていないことも確認しました。