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SmARTストランドとはどういうものですか。
SmARTストランドはPC鋼より線に光ファイバを組込んだ製品です。SmARTストランドはPC鋼より線の素線の谷間に沿って全長にわたり光ファイバを組み込み一体化しており、その光ファイバをひずみセンサとして使用することにより、PC鋼より線全長の張力分布を計測することが可能です。

SmARTストランドは大きく分けて裸線型、ECF(Epoxy Coated and Filled)型の2種類があります

SmARTストランド(左:裸線型、右:ECF型)
SmARTストランドの計測原理について知りたいです。
光ファイバ内に⼊射した光は伝播しながらあらゆる⽅向に散乱しますが、この散乱光は対象の光ファイバに⽣じるひずみによって周波数が変化します。また、光ファイバ内部を進む光の速さは一定であり、光が入射してから散乱光が計測器に戻るまでの帰還時間は、散乱光が生じた位置までの長さに比例するため、計測対象位置までの光ファイバの長さに対応する帰還時間における周波数特性を解析することによって、任意の位置に生じているひずみを計測することができます。計測されたひずみはPC鋼材の見かけのヤング率などから張力値に換算します。

本研究会ではBOTDR(Brillouin Optical Time Domain Reflectometer)方式、およびBOCDA(Brillouin Optical Correlation Domain Analysis)方式の2方式を対象としています。
SmARTストランドを用いた計測技術の特長や他の計測技術との違いについて知りたいです。
一般的な張力計(荷重計)は設置箇所での張力(荷重)のみが計測されますが、PC鋼より線の張力の分布を計測できる点は他のセンサには無い特長です。

光ファイバはガラス材質であり、耐久性に優れ電磁ノイズの影響を受けないため、安定した計測が可能である点も特長の一つです。

また、センサがPC鋼より線に組み込まれており、PC鋼より線の外径が変わらず、別なセンサを取り付けるスペースも不要であるため、汎用のPC鋼より線をそのまま置き替えることでの使用が可能です。PC橋梁における内ケーブル、外ケーブル、斜ケーブルや、グラウンドアンカーなどさまざまな用途に適用可能です。
SmARTストランド用いた張力計測の精度について知りたいです。
BOTDR 方式のひずみ計測技術においては後方散乱光を記録する受光部の性能などに起因するひずみの計測精度は±50μです。

PC橋梁用のケーブルとして広く用いられています15.2mmのストランドの場合、±50μのひずみは、ストランド1本あたり約±1.4kNの張力に相当します(同ストランドのプレストレッシング直後の引張力の制限値は、1本あたり183kNであるため、このひずみ計測精度は、PC 橋梁において一般的に導入される張力に対しては±1%程度に相当します)。SmARTストランドを用いて張力分布を計測する際には、見かけのヤング率の算定精度等の影響も含め、張力の計測精度は、緊張時の張力の制限値(降伏強度×0.9)に対して±3%以内であることを引張試験により確認しています。

なお、BOTDR 方式の計測機器の空間分解能は約1m(約1m の範囲のひずみの平均値が計測値として出力される)であるため、数m程度など極端に短いケーブルの場合や、短い範囲で小さな曲率で曲げられたケーブルなどにおいては、局所的な変動が過小評価される可能性があります。
SmARTストランドのラインナップはどのようなものがありますでしょうか。
SmARTストランドのラインナップを下記に示します。
SmARTストランドの機械的性質
タイプ 記 号 呼び径
(mm)
基本外径※1
(mm)
エポキシ被覆厚
(μm)
最大試験力
(kN)
0.2%永久伸びに対する試験力
(kN)
伸び
(%)
リラクセー
ション値
(%)
裸線型 SWPR7BL 15.2 15.2 ≧261 ≧222 ≧3.5 ≦2.5
ECF型 SWPR7BN 15.2 16.4 400~1,200 ※3
400~900※4
≧261 ≧222 ≧3.5 ≦6.5
SWPR7BL※2 15.2 16.4 ≧261 ≧222 ≧3.5 ≦2.5
SWPR7HT※2 15.7 16.9 ≧335 ≧285 ≧3.5 ≦6.5
  • ※1:ECF型はエポキシ被覆を含めた外径
  • ※2:低リラクセーションECF型及び高強度ECF型は、化学成分がJIS G 3536と異なるため、ご採用にあたっては予めその点にご注意下さい。
  • ※3:1断面内の各クラウン部
  • ※4:1断面内の全クラウン部(6か所)の平均

ECF型には被覆の仕様により下記の種類などがあります。用途に応じた仕様をご選択下さい。

  • 標準型(橋梁の外ケーブルなど)

  • 付着型(橋梁の内ケーブル・プレテンなど)

  • PE被覆型(橋梁の外ケーブル)
    (二重防食や紫外線劣化抑制)

  • PEシース付き付着型(グラウンドアンカーなど)
ECF型のラインナップと主な用途
※上記以外のサイズについては、研究会にお問合せください。